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血だるま剣法・おのれらに告ぐ

血だるま剣法・おのれらに告ぐ




Amazonでのコメント:当時の状況がよく分かる
〜製本なども含めて作品を堪能できます。

「血だるま剣法」の原版は製本されたものから新たに作成したとのことです。
そのためか絵がおおざっぱというか荒く印刷されています。
(当時の貸本では技術面・費用面の制限から
このような印刷が主流だったのかもしれません。)

呉氏の解説は丁寧な叙述で発禁問題の状況を伝えてくれます。
2つの作品が収〜〜録されていますが、
やはり原作の「血だるま剣法」が面白い。
「おのれらに告ぐ」は、絵の細密さでは遙かに勝るとはいえ
物語としての不合理や物足りなさを感じました。

なお「血だるま剣法」中での、
誤解にもとづいた記述や差別的文言は伏せ字となっていますが、
呉氏の解説を読むと大体の内容を知ることができます。

すばらしくエネルギーに溢〜〜れた奔放な作品で、
強い社会的意識に支えられています。〜

秘密の奇書
今回復刊されたこの血だるま剣法は長い間、出版不可能な本として、漫画マニアの間で認識されてきた本です。当時の貸本という媒体は低俗なレッテルを世間から貼られており、この時代の作品においては、評価されていないものが沢山ありました。作品の内容、作画がイマイチのものが多いのも事実でした。その中で突出して面白い、凄い作品というと一握りの作家達にどうしても限定されてしまうのも事実でした。作家自身も生活のために、書下ろし単行本(約130p)で叩き付けるようなタッチで量産していました。この時代の作品が復刻されるというのは、出版界ではめったに無いことです。平田先生も当時から大阪で魔像に作品を定期的に掲載したり、書き下ろし単行本シリーズを発表していた人気作家の一人です。その大胆なコマ割(A5のページ見開きいっぱいに使うことも)、コマの中に描写を留めず、奇声、や登場人物の刀がはみ出ている(裁断されているところまで、描ききっています〜)作法は現在読んでみても斬新なものがあります。本作品にはありませんが、先の部分を断ち切ったGペンで書いたと思われる「!マーク」の横に同じく読み仮名として「バ〜ン」と書き加えてあったりしました。当時の時代映画さながらに、読者に臨場感を与えるように、創意工夫を先生が行っていたことが伺えます。今回の血だるま剣法も例のごとくコマという枠の制約にとらわれず奇声音の表現がはみ出しまくり、映画さながらの迫力を醸し出しています。とにかく、疾走する幻之助の怒り、執念を最初から最後まで本人になったつもりで読んでやって下さい。読んだ後の、脱力感、不安感、問題提起感が大きい作品ですから。

異形の作品
30代から下の世代にとって、「劇画」というジャンルに馴染めるかどうかがこの作品の評価を左右すると思う。内容も絵もとにかく濃くて強い。乾いたところがひとつもない。ドラゴンボールやワンピースなどの子供っぽい柔らかさに慣れた読者なら相当な違和感を感じるだろう。柔弱な今の世相に直立する異物が本作品である。一読の価値はある。

憤怒と哄笑
二作が併載されているので「血」を傑作にしているものがよく分かる。両者に共通するものは差別者に対する軽蔑と憤怒。前者にのみ有るものは笑の要素だ。後者が容認されたのに前者が焚書にまでされたのもこの「笑」とその背後にある悲観主義ゆえだろうこの作品ではおよそ全ての登場人物と観念が平等に滑稽化されている差別者だけではなく幻之助もまた彼が闘争に邁進するほど皮肉にも体形は彼にとって最も嫌なものになり又障害者を逆に増やしてしまうのだから。最後は異形化した者同士が「凄絶且つ奇観」な死闘を演じ共に果てる救いは無いこれら全体が笑を以って描かれている。そしてこの悲観主義からくる笑の要素こそこの作品に鋭いリアリティーと荒々しい迫力を与えているものなのだ。それでも読後感に陰惨な物は無く差別に特有の後ろめたさも無いそれは笑いの最焦点が「差別」という人間性に固有の弱点そのものに置かれているからだ。高みから哄笑されているものは人間の不完全性と世界の不条理性なのだ。更に作者は幻之助を愛しその生き方を肯定している。穏当な上倉や師範代の意見はむしろこの不完全な世界にあっては無力なものとされている。(つまり世界から差別を一掃することは決して出来ぬという悲観論が「血」の中では表明されている。)作者が幻之助を愛するのは彼が平田美学の体現者だからだ。その美学は「この絶望的な世界の中にあって人は負けることが分かっていても闘わねばならぬ己の尊厳を死守するため、信じるに足るものなど無い、自己の根本情念にこそ忠実であれ」というものだ。その闘争が客観的には不様で失敗と破滅が確実であるほど情念の純度は高まり輝く。これは三島由紀夫の言うファリックナルシズムというものだ。







幻の代表作ここに復刻!!
近年、著者の過去の作品が復刻されているので非常にうれしいのだが、中でも最も重要な作品の一つがこの「血だるま剣法」だ。



そのリメイク作「おのれらに告ぐ」は日本文芸社版で既読だったのだが、リメイク作とのあまりの違いに驚き、そして、これが40年以上前に書かれたマンガなのかと驚いた。結局驚きっぱなしだった。



「血だるま剣法」は、貸本マンガとして昭和37年に刊行されたものの、部落開放同盟の抗議を受け、回収・廃棄・絶版に追い込まれた著者の幻の代表作である。「おのれらに告ぐ」も印象に残る作品だったが「血だるま剣法」を読んでしまうと、その印象は霞んでしまう。



本書にはこの2作と、「血だるま剣法」が絶版に至った経過とその時代背景、復刻の意義、著者が主張したかったであろうことを詳細に記した監修者呉智英の解説が収められている。そして可能な限りオリジナルを再現しようとした関係者の努力も合わせて考えてみると、絶版から40年以上、リメイクされてから35年以上経ってしまったが、著者も作品もこれで満足したに違いない。



平田弘史は貸本マンガ時代からマンガ(劇画)を書き続けている数少ない漫画家である。しかも題材とするのは武士の世界一本。私は勝手に日本を代表する漫画家の一人だと思っているのだが、一般的には知る人ぞ知る的な漫画家である。わかる気もするが残念だ。



買えるうちに買っておいたほうが良い作品
本書と同じ問題を扱ったマンガの傑作に永井豪の「鬼」がある。手塚治虫の「きりひと賛歌」もそうかもしれない。しかしこれほどストレートに怒りをぶちまけた作品は無いだろう。ここでは差別される側も差別者も平等に嗤われている。作者が絶望と嗤いの対象にしているものは「人間性」そのものだと思う。

「おのれらに告ぐ」は、絵こそ丁寧だが、図式化されたポリティカル・コレクトのなかに押し込められ、前作の主題は完全に変えられ、荒々しいヴァイタリティーも失われている。

血だるま剣法・おのれらに告ぐ



テーマ:株式入門 - ジャンル:株式・投資・マネー

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